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1 はじめに
小児ネフローゼ症候群の約90%は原因不明な特発性(一次性)ネフローゼ症候群であり,その主たる病型である微小変化型ネフローゼ症候群や巣状分節性糸球体硬化症は,指定難病であり小児慢性特定疾病でもある。その初期治療がステロイドであることは世界的にもコンセンサスが得られている。ステロイド投与により80~90%は完全寛解となり,ステロイド感受性ネフローゼ症候群(steroid-sensitive nephrotic syndrome:SSNS)と呼ばれる。一方,残りの10~20%はステロイド投与にもかかわらず蛋白尿が持続するステロイド抵抗性ネフローゼ症候群(steroid-resistant nephrotic syndrome:SRNS)である。SSNSはほとんど腎不全に進行することなく腎予後は良好であるが,その50~60%(特発性ネフローゼ症候群全体の40~50%)が頻回に再発する頻回再発型ネフローゼ症候群(frequently relapsing nephrotic syndrome:FRNS)やステロイドの減量・中止に伴い再発を繰り返すステロイド依存性ネフローゼ症候群(steroid-dependent nephrotic syndrome:SDNS)となる。FRNS/SDNSでは長期のステロイド投与に伴う種々の副作用が出現しやすく,ステロイドの減量中止を目的にシクロスポリンやシクロホスファミドなどの免疫抑制薬が用いられることが多いが,それらの免疫抑制薬使用中や使用後に再発を繰り返す症例は難治性FRNS/SDNSと呼ばれ,特発性ネフローゼ症候群の20~30%を占める。SRNSに対してはステロイド+シクロスポリン±ステロイドパルス療法が用いられ,80~90%は寛解となり末期腎不全に進行する確率は低くなるが,残りの10~20%(特発性ネフローゼ症候群の1~3%)は,それらの治療にも反応性することなくネフローゼ状態が持続する難治性SRNSと呼ばれる状態となり,末期腎不全に進行することが多い1)。2000年代初頭には難治性FRNS/SDNSや難治性SRNSといった難治性ネフローゼ症候群に対する標準治療はなく,その開発が強く望まれていた。

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