血清リン（生命予後，心血管病と目標値）

CKD-MBD and outcomes：serum phosphate（life prognosis, cardiovascular disease and target values）

はじめに

　生体内のミネラル代謝において腎臓は重要な役割を果たしており，慢性腎臓病（chronic kidney disease：CKD）ではさまざまな骨・ミネラル代謝異常（chronic kidney disease-mineral and bone disorder：CKD-MBD）が生じる。これは骨代謝異常に加え，ミネラルや副甲状腺機能などの検査値異常，さらに異所性石灰化を包含した全身性疾患として認識されている。日本では患者の長期予後を示す指標として，生命予後が最も良好となる血清リン（P）値が2006年の二次性副甲状腺機能亢進症ガイドラインで設定された。その後，2012年にCKD-MBD診療ガイドライン（2012年版ガイドライン）に改訂された時点で再検証が行われ，透析期は血清P目標値が3.5～6.0 mg/dLとされ，新たに保存期の血清P目標値は各施設の基準値内に維持することが推奨された^1）。またこのガイドラインでは，P・カルシウム（Ca）・副甲状腺ホルモン（parathyroid hormone：PTH）のなかでもPの管理を優先することが推奨されている。これは，日本透析医学会統計調査（Japanese Society for Dialysis Therapy Renal Data Registry：JRDR）のデータを用いた大規模なコホート研究において高P血症が総死亡・心血管死亡リスクと最も強く関連した結果に基づいている^2）。本稿では，透析導入患者および慢性透析患者の高齢化が進んでいる現在において，生命予後や心血管病と血清P値の目標値とその設定根拠となるエビデンスについて概説する。