Japanese
English
特集 CKD-MBD ―進歩と革新
CKD-MBD関連因子
血清石灰化傾向(T50)
Serum calcification propensity
上殿 英記
1
,
仲谷 慎也
1
,
庄司 哲雄
2
UEDONO Hideki
1
,
NAKATANI Shinya
1
,
SHOJI Tetsuo
2
1大阪公立大学大学院医学研究科代謝内分泌病態内科学
2愛仁会井上病院臨床研究センター
キーワード:
血清石灰化傾向(T50)
,
calciprotein particles
,
CKD-MBD
Keyword:
血清石灰化傾向(T50)
,
calciprotein particles
,
CKD-MBD
pp.583-588
発行日 2025年5月25日
Published Date 2025/5/25
DOI https://doi.org/10.24479/kd.0000001869
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はじめに
血管石灰化は慢性腎臓病(chronic kidney disease:CKD)患者に高頻度に認められ,予後悪化と関連する。この血管石灰化の進展には多くの因子が関与するが,リンがその中心的な役割を果たしているとされてきた。一方,肝で分泌される多機能糖蛋白質であるfetuin-Aは,石灰化抑制作用を有する。体内でリン・カルシウムの負荷がかかると,fetuin-Aはリン酸カルシウム結晶の析出を防ぐため,コロイド状のprimary CPP(calciprotein particles)を形成する。つまり,CPPは石灰化抑制作用の結果として生じた産物であると考えられるが,過剰な石灰化ストレスがかかると,ハイドロキシアパタイトへの結晶化が進み,secondary CPPへと成熟する。近年の研究から,このsecondary CPPが血管石灰化におけるリン毒性の主な実体であることが示されている。そのため,primary CPPからsecondary CPPへの成熟を抑制することが,石灰化の進行を防ぐのに重要であると考えられる。このprimary CPPからsecondary CPPへの変換を示す指標として,「血清石灰化傾向(T50)」が注目を集めており,T50をサロゲートマーカーとしたさまざまな臨床研究が行われている。本稿では,新たなリン毒性・石灰化ストレスの指標であるT50について概説する。

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