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はじめに
わが国では,主に交通事故や労働災害といった外傷が切断の主な原因であったが,近年,循環器疾患,特に糖尿病や末梢動脈疾患(peripheral arterial disease:PAD)などの血管障害による切断が急増している1)。血液透析患者のPAD発症率については,新規透析導入患者で24.3%2),維持透析患者では37.2%3)と高値である。またPADのなかでも,下肢動脈疾患(lower extremity arterial disease:LEAD)の発症リスクが高くなる。特に実臨床で多く,難渋する病態として,LEADの最重症型である包括的高度慢性下肢虚血(chronic limb threatening ischemia:CLTI)がある。CLTIの特徴は,安静時下肢痛または難治性潰瘍を呈し,血行再建術の適応となり,生命予後は不良な点である。また外科的血行再建術,血管内治療を問わず,術後3年の総死亡率は4~5割程度に達することが明らかにされている4)。一般的にCLTIの発症には,透析導入が密接に関連していることから,大切断のリスクが非常に高い病態である。病態の増悪の要因としては,透析中の除水による循環血液量減少に対する末梢血管収縮反応が下肢虚血を引き起こし,疼痛や足病変の増悪する要因となることが明らかにされている。そのため,透析中は,下肢末梢への微小循環を十分に維持する取り組みが求められる。加えて,足病変を有する透析患者は,下肢の筋力低下や足部の可動域制限を中心とした身体機能の低下を有している。そのため,創傷の発症予防期,治療期,再発予防期に至るまで継続的なリハビリテーションを実践することが重要となる。透析患者の足病変に介入する際には,慢性腎不全,糖尿病,フレイル・サルコペニアなどの重複障害の病態を十分に評価したうえで,運動負荷量の設定が必要となる。本稿では,足病変を有する透析患者のリハビリテーションのポイントについて紹介する。

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