Japanese
English
特集 遺伝性消化管疾患の内視鏡診療
遺伝性胃神経内分泌腫瘍
Hereditary syndromes associated with gastric neuroendocrine tumors
梅野 淳嗣
1
,
井原 勇太郎
1,2
,
宮園 智至
1
Junji Umeno
1
,
Yutaro Ihara
1,2
,
Satoshi Miyazono
1
1九州大学大学院病態機能内科学
2遠賀中間医師会おんが病院消化器内科
キーワード:
多発性内分泌腫瘍症1型
,
ATP4A遺伝子
,
プロトンポンプ
Keyword:
多発性内分泌腫瘍症1型
,
ATP4A遺伝子
,
プロトンポンプ
pp.828-832
発行日 2025年6月25日
Published Date 2025/6/25
DOI https://doi.org/10.24479/endo.0000002117
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はじめに
胃神経内分泌腫瘍(neuroendocrine tumor:NET)は,胃カルチノイドとも呼称され,癌に類似した組織形態を示す腫瘍である1)。この腫瘍は,内分泌細胞へと分化する胃粘膜上皮細胞から発生する。多くはヒスタミンを分泌するクロム親和性顆粒を有するECL細胞(enterochromaffin-like cell)に由来するとされ,発生環境の違いによりⅠ〜Ⅲ型に分類されてきた1〜5)(表:Rindiの分類)。Ⅰ型はA型胃炎を背景に発生するものであり,Ⅱ型は多発性内分泌腫瘍症1型(multiple endocrine neoplasia type 1:MEN1)やZollinger-Ellison症候群(Zollinger-Ellison syndrome:ZES)を伴う。一方,Ⅲ型は高ガストリン血症を示さない孤発性のものである。さらに,胃壁細胞の機能不全に起因する稀な亜型の胃NET症例が報告されており6〜8),近年ではⅣ型として認識されつつある。一部の症例ではプロトンポンプのαサブユニットをコードするATP4A遺伝子の病的バリアントが同定されており,Ⅳ型胃NETはプロトンポンプ関連蛋白質の機能欠失による遺伝性疾患であることが示唆されている9, 10)。本稿では,遺伝性胃NETの一形態として,Rindiの分類におけるⅡ型およびⅣ型胃NETについて概説する。

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