【Note】食道胃接合部癌の病理―噴門部胃癌とBarrett食道腺癌について―

Pathology of cancer arising from esophagogastric junction and gastric cardia: Barrett esophageal adenocarcinoma and gastric cancer at the cardia

はじめに

　近年，食道胃接合部に発生する腫瘍は増加しており，注目される領域である。腫瘍の中心が明らかに胃側に存在すれば「噴門部胃癌」となり，Barrett食道に囲まれて腫瘍が存在すれば「Barrett食道腺癌」と診断することになるが，腫瘍の中心が腫瘍の発生部位であるとは限らず，「食道胃接合部」をまたぐようにして存在する腫瘍の発生部位・由来を明確にすることは難しい（図1）。発生部位を推定するために食道胃接合部の定義を明確にすることも大事であるが，組織学的に食道胃接合部を確定することは切除検体においても容易ではない。実際，Barrett食道由来と判断できない病変を接合部腺癌として扱っている報告もみられるが^1），Barrett食道を有する患者に噴門部胃癌が発生し食道側に進展する可能性も考えられる他^2），腫瘍がある程度の大きさになれば，背景にshort segment Barrett esophagus（SSBE）の存在を証明することはかなり難しくなる。Ultra short segment Barrett esophagus（USSBE）に至ってはBarrett食道が存在し腫瘍が接していたとしても，本当に腫瘍の由来がBarrett食道であるのか，鑑別することは非常に難しい。