Japanese
English
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 参考文献 Reference
疾患の概念
肝硬変などの疾患に起因して発症した門脈圧亢進症では,側副血行路として食道・胃静脈瘤が頻発し,日常臨床の現場で問題となることが多い。一般的に食道・胃静脈瘤に対して静脈瘤破裂の治療や出血予防のために疾患治療ガイドラインに準拠して内視鏡治療を行うが,治療に伴う血流変化によって,十二指腸や小腸を含む消化管に異所性静脈瘤が発生することがある。小原は食道・胃静脈瘤を有する症例1,149例中で,その3.8%に異所性静脈瘤を認めることを報告した1)。日本門脈圧亢進症学会が施行した全国調査では,異所性静脈瘤の発症部位は,直腸が44.5%と最も多く,次いで十二指腸が32.9%,小腸が6.4%であることが示された2)。また,その十二指腸・小腸静脈瘤の原因疾患は肝硬変が80.3%,肝外門脈閉塞症が10.4%であり,多くの症例で食道・胃静脈瘤に対する内視鏡的・外科的治療後に発生している。十二指腸・小腸静脈瘤は,約半数の症例で消化管出血を契機に発見され,特に小腸静脈瘤でその傾向が強いことが特徴である。診断は,上下部消化管内視鏡検査で直接観察することで行われるが,造影CTやMRIを含む他の画像所見で小腸静脈瘤の存在が疑われた際や上下部内視鏡検査でも特定できない原因不明の消化管出血症例に対応する際には,小腸内視鏡やカプセル内視鏡検査を行う必要がある。また,造影CTやMRIは局所の評価以外にも血行動態の評価も行うことが可能であるため,内視鏡検査と併用することが適切である。十二指腸・小腸静脈瘤の治療は内視鏡治療,インターベンショナルラジオロジー(interventional radiology:IVR),両者の併用療法,外科治療(小腸部分切除や静脈瘤結紮術)が選択される。十二指腸・小腸静脈瘤は血流量が多く,静脈瘤の破裂により致命的となるため,出血例に対する緊急内視鏡検査で出血点が同定された場合には,内視鏡的静脈瘤硬化療法(endoscopic injection sclerotherapy:EIS)が選択されることが多い。
© tokyo-igakusha.co.jp. All right reserved.