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特別寄稿
胃静脈瘤出血に対する標準的治療手技と注意すべき手技とは?
Editorial: endoscopic clipping for bleeding gastric varices
小原 勝敏
1
Katsutoshi Obara
1
1福島県保健衛生協会内視鏡センター
キーワード:
胃静脈瘤出血
,
Cyanoacrylate系薬剤注入法
,
クリップ止血法
Keyword:
胃静脈瘤出血
,
Cyanoacrylate系薬剤注入法
,
クリップ止血法
pp.1089-1091
発行日 2023年8月25日
Published Date 2023/8/25
DOI https://doi.org/10.24479/endo.0000000847
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胃静脈瘤出血に対する最良の治療手技,危険な治療手技とは?
胃静脈瘤出血に対するEBMに基づいた治療方針として,肝硬変診療ガイドライン1)では,「胃静脈瘤出血に対して,Cyanoacrylate系薬剤注入法(CA法)は有用であり,施行することを推奨する。CA法は,βブロッカー投与よりも効果的であり,さらに内視鏡的静脈瘤結紮術(EVL)よりも安全で,再出血率も低く効果的である(エビデンスレベルA)」と記述されている。N-buthyl-2-cyanoacrylate(ヒストアクリルⓇ;HA)に代表されるCyanoacrylate系薬剤は,組織接着剤であり,血液や組織と接触すると,ただちに重合体を形成する。この薬理作用を応用して,出血点の近傍の血管内に注入することで比較的容易に止血が得られることから,CA法は胃静脈瘤出血に対する第一選択の治療法である2~6)。これに対して,食道静脈瘤出血の第一選択とされているEVLは,豊富な胃静脈瘤血流の制御が困難であり,Oリング脱落後の潰瘍形成部位から大出血をきたす可能性があるため,胃静脈瘤治療には推奨されていない。また,胃静脈瘤出血に対するクリップ止血法7)については,有用性よりも再出血の危険性が高く,EVL同様に胃静脈瘤血流の制御は不可能であり,安易に施行すべきではない。たとえクリップ法で一時止血ができても,数時間のうちに再出血することが多く,さらには,止血に用いたクリップが障害となってバルーン圧迫止血法が困難となる。また,再度クリップ法で一時止血ができたとしても,その後再出血を繰り返すことになる。このような状態で福島県立医科大学に紹介され,治療した自験例が何例かある。
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