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疾患の概要
1923年にNicholsonが初めて十二指腸粘膜に胃腺窩上皮の存在を見出し,胃上皮化生(gastric metaplasia)として報告した1)。Lessellsらは胃底腺組織と胃型被覆上皮の両者を有するものが異所性胃粘膜で,これに対して胃底腺組織を伴わず胃型被覆上皮のみを有するものが胃上皮化生と定義した2)。異所性胃粘膜は先天性的な胃組織の迷入とされ,十二指腸球部に多い。一方で胃上皮化生は炎症に伴ってみられる後天的な変化であり,十二指腸球部に多いが,下行部にみられることもある。色調は周囲と同色か発赤調で,顆粒状粘膜あるいは大小不同のなだらかな隆起が多発したり,円形から半球状の表面平滑な隆起が多発あるいは集簇したものである。中井らは胃型被覆上皮を伴った十二指腸球部の隆起性病変を①球状隆起散在型,②集簇隆起型,③びらん隆起型,④顆粒状隆起型の4型に分け,胃上皮化生では①③④いずれかを呈すると報告している3)。粘膜表面は胃小窩模様が観察され,narrow band imaging(NBI)併用拡大観察により胃小窩模様とともにドーナツ模様の腺管が観察される4)。胃上皮化生は異所性胃粘膜と比較して萎縮性胃炎を合併する頻度が高く(100% vs. 16%),Helicobacter pylori (H. pylori)陽性率も高い(92% vs. 9%)3)。また,十二指腸潰瘍の生検組織の86%に胃上皮化生が存在し,その大半にH. pyloriが存在することから,胃上皮化生へのH. pylori感染を十二指腸潰瘍の一因とする報告もある5)。しかし,これらを正確に鑑別するには組織診断により胃底腺の有無を確認する必要があるが,生検では診断するための組織の採取が不十分な場合も多い。
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