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Ⅰ.SSLへのprecutting EMRの適応
ESDの適応は長径2mm以上の早期癌もしくは2cm未満の線維化を伴う早期癌とされており,基本的には悪性病変に対する治療といえる。そのため長径20~30mmのsessile serrated lesion(SSL)は良性病変であり原則的にはESD適応とはなりえない。SSLはserrated pathwayにより癌化することが知られており,前癌病変としての内視鏡治療が必須である。SSLはSSLD(SSL with dysplasia,欧米の基準では粘膜内癌を含む)を経て癌に進展すると考えられるが,サイズに応じSSLDの頻度が高まり,長径20mm以上ではその頻度は32.4%と報告される1)。また当院の検討でも,2013~2019年に内視鏡治療を行った長径20mm以上の鋸歯状病変におけるSSLDの頻度は29.4%(20/68)と同様の頻度であった。このことから長径20mm以上のSSLはSSLDの可能性があることを加味し一括切除が望まれる。SSLDの特徴的内視鏡所見として白色光観察では発赤,顆粒,陥凹があり,拡大NBI(narrow band imaging)/BLI(blue laser imaging)観察ではⅢL,Ⅳ型,Ⅳ型pit様のsurface patternや蛇行を有しnetworkを形成するvessel patternがあげられる2)。当院では長径20mm以上のSSLDが疑われる病変,さらに長径30mm以上のSSL病変もSSLDの頻度が高いことを鑑みESD適応としている。一方で,長径20~30mmの平坦で褪色調のSSLはSSLDの頻度も低く良性病変の可能性が高いため原則としてESDは行わずpiecemeal EMRの適応としている。SSLであれば分割切除も容認しえるが予見しえないdysplasiaの合併なども稀に経験するため,できるかぎり一括切除を行い精密に病理組織の評価を行うようにしている。また長径20mm未満のSSLであっても通常のEMRが難しい部位,局注が不均一となりスネアリングが困難となった際にはprecutting EMRを行うこととしている。昨今underwater EMR(UEMR)もこのような病変に有効と考えられるが,precutting EMRでは断端を確実に視認しながらスネアリングができるため,より確実な一括切除が可能と考えている。
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