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症例提示
81歳男性。便潜血陽性を契機に施行した大腸内視鏡検査にて上行結腸に平坦隆起性病変を認め,治療目的に当院を紹介受診した。大腸内視鏡では,上行結腸に25mm大の血管透見の消失した正色調の平坦隆起性病変を認めた。脱気にて,病変の中心部は粘膜のひきつれを伴い,相対的な陥凹所見を認めた(図a)。Narrow band imaging(NBI)非拡大観察では全体に褪色調として認識された(図b)。NBI拡大観察では大部分では血管構造は認識されず,一部に拡張した黒色点やwhite opaque substance(WOS)を認めたが,表面構造はおおむね均一であった(図c)。しかし,陥凹部分では軽度拡張・蛇行した血管が視認された(図d)。したがって,隆起部分はJNET(The Japan NBI Expert Team)分類でType 1〔sessile serrated lesion(SSL)〕であり,相対的陥凹部分ではType 2A(low grade intramucosal neoplasia)と診断した。インジゴカルミン散布後に病変の境界は明瞭となり,脱気すると中心の相対陥凹が強調された。相対陥凹部分を含め病変全体で星芒状,または開大Ⅱ型pit patternを認めた(図e,f)。最終内視鏡診断は,サイズ25mm大,肉眼型0-Ⅱa型,予想組織型SSLとした。相対陥凹の部位においてdysplasiaの可能性を考慮してESDを施行し,病変を一括切除した(図g)。病理組織学的に病変はSSLであり,陥凹部分に一致して高分化管状腺癌を伴い,粘膜下層へ浸潤(粘膜筋板より950μm)していた(図h,i)。高分化管状腺癌は表面には露出せず表層はSSLに覆われており,周囲の線維化も乏しく,内視鏡で腫瘍の粘膜下層浸潤を評価することは困難と考えられた。脈管侵襲陰性で,垂直断端と水平断端は陰性であった。免疫染色では,SSLと高分化管状腺癌はともにMLH-1の発現が保たれていた1)。
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