特集 酸分泌抑制薬の功罪
症例 PPI内服により扁平上皮に被覆されその後急速な増大を呈したBarrett食道癌
岩谷 勇吾
1
,
越知 泰英
,
長谷部 修
1信州大学 医学部内科学第二講座
キーワード:
Barrett食道
,
食道鏡法
,
食道腫瘍
,
腺癌
,
経口投与
,
ヨウ素
,
病勢悪化
,
Proton Pump Inhibitors
Keyword:
Barrett Esophagus
,
Esophagoscopy
,
Iodine
,
Administration, Oral
,
Adenocarcinoma
,
Disease Progression
,
Esophageal Neoplasms
,
Proton Pump Inhibitors
pp.1206-1211
発行日 2020年8月25日
Published Date 2020/8/25
DOI https://doi.org/10.24479/J02312.2020376643
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患者は70歳代男性。人間ドックで施行された上部消化管内視鏡検査にて下部食道右壁に潰瘍性病変を認め、生検を行ったところ低分化型扁平上皮癌と診断された。PPIを処方され精査加療目的に当院紹介となった。当院で内視鏡を再検したところプラハ分類C2M5のBarrett食道を認めたが、潰瘍性病変や腫瘍を疑う所見は得られなかった。2ヵ月後に再度内視鏡を行ったが、Barrett食道内右壁に大きな扁平上皮島を認めるのみで、やはり腫瘍を疑う所見は認められなかった。その後フォローが中断したが、1年4ヵ月後に患者が嚥下障害を主訴に再受診した。内視鏡を行うとBarrett食道内右壁に2型進行癌を認め、手術が行われた(pT3N2M0、Stage III)。本症例では癌性潰瘍がPPIで加療されることにより、潰瘍部に再扁平上皮化をきたし癌を被覆させてしまったため、腫瘍の存在診断が困難になったと考えられた。
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