発行日 2012年7月1日
Published Date 2012/7/1
DOI https://doi.org/10.15106/J00974.2012315584
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81歳男。心筋梗塞に対して冠動脈ステント留置術、左下肢閉塞性動脈硬化症(ASO)に対して血行再建術の既往歴がある。他院にてアスピリンとチクロピジンおよびラベプラゾールを内服していた。今回、全身倦怠感が生じ、ふらつき、血圧低下のため入院し、翌日、黒色便を生じたため消化器内科へ転科した。Hbの低下、BUN、CrおよびBUN/Cr比の増加を認めた。輸液後にHbがさらに低下し大量出血が疑われた。上部消化器内視鏡を行ったところ、食道裂孔ヘルニアとShort Segment Barrett's Esophagus(SSBE)、食道胃接合部に約15×8mm隆起した発赤、漏出性出血を認めた。Barrett食道癌0-I+IIa(m)を疑い、トロンビン散布で止血を確認した。第2病日より抗血小板薬を中止し、ランソプラゾールへ変更し、第6病日に内視鏡的粘膜切除術(EMR-L)で潰瘍部分をクリップで縫合した。病理結果は扁平上皮島の存在や筋板の二重構造がみられ、高分化型のBarrett食道腺癌で深達度m、ly0 v0、側方断端が一部陽性との診断であった。EMR-L翌日よりヘパリン点滴を、術後6日にアスピリン100mgを再開し、術後7日にヘパリンを中止し、合併症もなく退院した。
©Nankodo Co., Ltd., 2012