特集 妊娠・分娩と血液異常
5.妊娠・分娩と線溶系の異常
岩城孝行
1
Takayuki Iwaki
1
1浜松医科大学 薬理学教室 准教授
pp.1459-1466
発行日 2015年9月30日
Published Date 2015/9/30
DOI https://doi.org/10.20837/5201510057
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我々の祖先は胎児発育期の子孫の安全と引き換えに,母体を危険にさらす可能性の高い胎盤形成という形式を獲得した。母体と胎児の境界面にはフィブリノイド層が存在し,母体と胎盤の接着に重要な役割を担っている。この部位は凝固反応が絶えず活性化されている部位である。また,凝固反応に応じて線溶活性の亢進が起こることでバランスを保っており,そのバランスが崩れることで胎盤接着機能が失われることが明らかとなっている。ヒトでの線溶異常の報告は少なく,それを補う目的で多数のノックアウトマウスが作出され解析されたが,PAI-1欠損における表現型は全くと言って良いほど異なり,ヒトでは大出血を示すことが判明してきた。PAI-1は低下症の診断方法が確立していないので,発見には注意が必要である。