特集 妊娠・分娩と血液異常
4.妊娠・分娩と凝固系の異常
西口富三
1
Tomizo Nishiguchi
1
1静岡県立こども病院 周産期センター センター長
pp.1449-1457
発行日 2015年9月30日
Published Date 2015/9/30
DOI https://doi.org/10.20837/5201510047
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生体は血液凝固線溶系および各々の制御機構のもとで正常な血流維持を保っている。しかし,各因子の先天的な異常や後天的な要因の関与により破綻をきたすと,出血傾向や血栓形成をきたしてくる。分娩は出血リスクを伴うため,妊娠時は生理的に凝固能亢進状態を呈する。しかし,それが逆に作用し,tissue factor(TF)が大量に流入するような病態,例えば胎盤早期剥離では重篤なDICを発症する一方,凝固制御機構の異常(分子異常)により血栓症リスクが高まる。後者は血栓性素因と呼ばれるが,欧米人ではAPC抵抗性(F V Leiden)が主要な素因となっているが,日本人においてはPS Tokushimaに代表されるPS異常や,PC・AT異常(分子異常)の関与が問題となる。