Topics 「身近な話題・世界の話題」(116)
PNHの自然寛解
中尾眞二
1
Shinji Nakao
1
1金沢大学 医薬保健研究域医学系 細胞移植学(血液・呼吸器内科)教授
pp.962-966
発行日 2013年6月30日
Published Date 2013/6/30
DOI https://doi.org/10.20837/5201307962
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発作性夜間血色素尿症(paroxysmal nocturnal hemoglobunuria:PNH)の一部は,長期の血管内溶血期間を経たのち自然寛解を果たすことが知られていた。近年,補体成分C5に対するヒト化モノクローナル抗体エクリズマブが臨床応用された結果,エクリズマブ投与を受けたPNH患者では血管内溶血による諸症状が改善するだけでなく,glycosylphosphatidylinositol(GPI)アンカー膜蛋白を欠くPNH形質血球の割合が減少することが報告され,注目を集めている。PIG-A遺伝子変異を持つ造血幹細胞のほとんどは,ゲノムの不安定性やそれに伴う二次的なゲノム異常を持たず,その結果として増殖優位性を獲得することもない。このため,PNHの自然寛解は,PIG-A変異がたまたま生じた正常幹細胞の寿命を反映していると考えられる。