増刊号 血液検査実践マニュアル
Part 4 溶血検査
3.検査の実際
2)PNHに関する検査
臼杵 憲祐
1
,
長野 美恵子
1
,
浦部 晶夫
1
1NTT東日本関東病院血液内科
pp.813-815
発行日 2000年6月15日
Published Date 2000/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543905474
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はじめに
発作性夜間血色素尿症(paroxysmal nocturnal hemoglobinuria;PNH)は赤血球膜の補体感受性の亢進を特徴とする後天性溶血性貧血である.PNHではglycosyl-phosphatidyl-inositol(GPI)アンカー蛋白の生合成障害があり,GPIアンカー蛋白であるCD55やCD59が赤血球膜上で欠損している.CD55は補体C3/C5転換酵素の崩壊促進因子(decay-accelerating factor)であり,CD59は補体の膜侵襲複合体形成を制御する分子である.これらの補体制御蛋白質の赤血球膜上での欠損によって補体感受性が亢進していると考えられている.なお,最近,GPIアンカー蛋白の生合成障害の原因としてPIG-A遺伝子の異常が明らかになった.
PNHの診断にはSugar Water試験やHam試験が用いられるが,いずれもPNH赤血球の補体感受性の亢進を検出する検査である.Sugar Water試験は補体のclassical pathwayの活性化による溶血を,Ham試験は補体のalternative pathwayの活性化による溶血を利用したものである.Sugar Water試験は鋭敏であるためPNHのスクリーニングに用いられる.
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