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特集 プラスミドによる薬剤耐性の菌種間伝播と施設内感染-そのサーベイランス・感染管理の在り方-
2.グラム陽性菌におけるプラスミド媒介性の薬剤耐性の特長 2)グリコペプチド耐性
Glycopeptide(vancomycin)-resistances encoded on the mobile elements including conjugative plasmids in enterococci
富田治芳
1
,
久留島潤
2
,
千葉菜穂子
2
,
野村隆浩
3
,
橋本佑輔
3
,
谷本弘一
4
Tomita Haruyoshi
1
,
Kurushima Jun
2
,
Chiba Naoko
2
,
Nomura Takahiro
3
,
Hashimoto Yusuke
3
,
Tanimoto Koichi
4
1群馬大学大学院医学系研究科環境病態制御系生体防御機構学細菌学分野 教授/群馬大学大学院医学系研究科附属薬剤耐性菌実験施設 施設長
2群馬大学大学院医学系研究科環境病態制御系生体防御機構学細菌学分野 助教
3群馬大学大学院医学系研究科環境病態制御系生体防御機構学細菌学分野
4群馬大学大学院医学系研究科附属薬剤耐性菌実験施設 准教授
キーワード:
VRE
,
伝達性プラスミド
,
接合伝達性トランスポゾン
,
VRSA
Keyword:
VRE
,
伝達性プラスミド
,
接合伝達性トランスポゾン
,
VRSA
pp.41-54
発行日 2015年6月25日
Published Date 2015/6/25
DOI https://doi.org/10.20837/2201507041
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臨床上で問題となるグリコペプチド(バンコマイシン)耐性菌は,安定した高度耐性(高MIC〔最小発育阻止濃度〕値)を示すバンコマイシン耐性腸球菌(VRE)および高度バンコマイシン耐性メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(VRSA)である。これらの耐性菌は,放線菌を起源とする特異的な耐性遺伝子を菌が獲得することによって生じる。腸球菌においては9種類の耐性遺伝子型が報告されているが,特に重要なのは,耐性遺伝子群の働きによって,より高度耐性となり,かつ分離頻度の高い,VanA型,VanB型VREである。VanA型耐性遺伝子はトランスポゾンTn1546(10.9kb)として,また,VanB型耐性遺伝子は接合伝達性トランスポゾンTn1549(34kb)として転移因子内に存在する。国内外のVRE株から,これらのバンコマイシン耐性を含む多剤耐性伝達性プラスミドが見出されており,伝達性プラスミドが腸球菌の多剤耐性化に関与していることが明らかとなっている。一方,これまでに解析されたVRSA株はいずれもVanA型耐性遺伝子を保持するMRSA株であり,それぞれは共存したVanA型VREから伝達性プラスミドを介して,菌種を超えて耐性遺伝子を独立に獲得したと考えられている。