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特集 細菌の進化から考える抗菌薬耐性
8.グリコペプチド耐性 -腸球菌のバンコマイシン耐性遺伝子-
Glycopeptide resistance -Vancomycin resistant enterococci-
富田治芳
1
Tomita Haruyoshi
1
1群馬大学大学院医学系研究科生体防御機構学細菌学分野 教授/薬剤耐性菌実験施設 施設長
キーワード:
グリコペプチド
,
バンコマイシン耐性腸球菌(VRE)
,
遺伝子交換機構
,
多様性
,
fitness cost
Keyword:
グリコペプチド
,
バンコマイシン耐性腸球菌(VRE)
,
遺伝子交換機構
,
多様性
,
fitness cost
pp.91-100
発行日 2013年12月25日
Published Date 2013/12/25
DOI https://doi.org/10.20837/2201401091
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細菌の細胞壁合成に作用し抗菌活性を示す非常にユニークなグリコペプチド系抗生物質は土壌細菌の放線菌から発見された。放線菌が元来もっていた自身の抗菌物質に対する耐性(免疫)機構が,生物のもつ遺伝子交換機構によって,他の生物種,細菌間に伝達され,最終的に腸球菌が獲得することでVRE(バンコマイシン耐性腸球菌)が出現したと考えられる。その耐性機構は異なる複数の宿主による遺伝子の獲得と伝達にともない多様性を獲得した結果,複数の型が存在している。また,同時に遺伝子の宿主への適応(fitness costの低減)の過程を通じて,より複雑で巧妙な耐性機構へと進化してきた。さらに腸球菌に耐性遺伝子が獲得されたあとも突然変異や転移因子の挿入などによりさまざまな形質を示すVREが出現し,環境により適応したVREが選択され広がっている。抗菌薬の使用という人為的に作り出された,変化する特殊な環境下において菌は耐性化し,常に多様性を獲得しながら進化を続けている。