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◆製剤の特徴 「ヘムライブラ®皮下注30mg,同60mg,同90mg,同105mg,同150mg(エミシズマブ〔遺伝子組換え〕)」(以下,本剤)は,国内で創製された世界初のIgG(免疫グロブリンG)型の遺伝子組換えヒト化二重特異性モノクローナル抗体(バイスペシフィック抗体)である。IgG抗体はY字型の構造をしており,通常,Y字の先端に存在する2つの抗原結合部位は同一の抗原を認識する。一方,バイスペシフィック抗体は非対称の構造を有し,左右が異なる抗原に結合する。本剤は,バイスペシフィック抗体の特性を活かして,血液凝固第VIII因子(F VIII)の補因子機能を代替することを目的に創製された。 F VIIIはリン脂質膜上で活性型血液凝固第IX因子(F IX a)および血液凝固第X因子(F X)と結合・架橋し,F IX aとF Xを適切な位置関係に保持することでF IX aによるF Xの活性化を促進させる。エミシズマブは一方の腕で活性型血液凝固第IX因子(F IX a)に,他方の腕で血液凝固因子X因子(F X)に結合し,F IX aとF Xを精緻に架橋することにより,F VIIIの補因子機能を代替し,その下流の血液凝固反応を促進すると考えられる。先天性血友病A患者は先天的なF VIIIの欠損または機能異常が見られるためF VIIIの補充が必要となるが,反復するF VIII製剤の投与によりF VIIIに対する抗体(インヒビター)が発生し,治療効果が減弱することがある。中でも,重症型の先天性血友病A患者におけるインヒビター発生率は25~ 30%と報告されている1)。本剤は,F VIIIとは異なる構造を持つことから,F VIIIのインヒビターを誘導せず,F VIIIのインヒビターを保有する場合にも作用する。また,抗体製剤であるため週1回の皮下投与での治療が可能となり,患者の生活の質向上も見込まれる。 本剤は厚生労働省より希少疾病用医薬品に指定され,「血液凝固第駅VIII子に対するインヒビターを保有する先天性血液凝固第VIII因子欠乏患者における出血傾向の抑制」の効能・効果で承認,2018年5月に発売された。