連載 医薬品情報(DI)室より 注目の新薬情報〈9〉
ファリーダックⓇ カプセル10mg,同15mg
末廣陽子
1
,
塚本仁
1
1福井大学医学部附属病院薬剤部
pp.2355-2357
発行日 2016年10月1日
Published Date 2016/10/1
DOI https://doi.org/10.20837/1201610159
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◆ 製剤の特徴 「ファリーダック®カプセル10mg,同15mg」(パノビノスタット乳酸塩カプセル)は,ケイ皮ヒドロキサム酸の化合物クラスに分類される新規構造を有するヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)阻害剤である。HDACは腫瘍組織において過剰に発現し,血液悪性腫瘍の発症に関与していると考えられている。本剤は,HDAC活性を阻害することで,ヒストンおよび非ヒストン蛋白(がん細胞の増殖に関連する転写因子や細胞内骨格および蛋白安定化を制御する機能蛋白)のアセチル化レベルを上昇させ,がん抑制遺伝子の転写促進,がん細胞のアポトーシス,細胞周期停止の誘導などを引き起こし,抗腫瘍効果を発揮する。多発性骨髄腫(MM)は難治性の疾患であり,既存治療を行ってもほとんどの患者で再発や病勢進行を繰り返す。そのため,再発・難治性のMM に対する新たな薬剤の開発が待ち望まれていた。本剤は,ボルテゾミブ(BTZ)およびデキサメタゾン(DEX)の3剤併用治療により,再発または難治性のMM 患者の無増悪生存期間(PFS)を有意に延長することが示されている。