連載 医薬品情報(DI)室より 注目の新薬情報〈15〉
シクレストⓇ舌下錠5mg,同10mg
上西幸治
1
,
寺田智祐
2
1滋賀医科大学医学部附属病院薬剤部
2滋賀医科大学教授・医学部附属病院薬剤部長
pp.1132-1134
発行日 2017年4月1日
Published Date 2017/4/1
DOI https://doi.org/10.20837/1201704168
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◆ 製剤の特徴 「シクレスト®舌下錠5mg,同10mg(アセナピンマレイン酸塩)」は,セロトニン(5-HT1A,5-HT2A,5-HT2B,5-HT2C,5-HT6,5-HT7),ドパミン(D1,D2,D3,D4),αアドレナリン(α1,α2)およびヒスタミン(H1,H2)といった,さまざまな受容体に対して作用する薬剤であり,初回から維持用量の「1回5mgを1日2回」での投与が可能である。本剤のようにさまざまな受容体に親和性を示す抗精神病薬はMARTA(Multi-Acting Receptor Target Antipsychotics)に分類され,統合失調症の陽性症状だけでなく,陰性症状にも効果を示す。5-HT1A,5-HT6および5-HT7への作用は認知機能に関連し,本剤の服薬により統合失調症患者の認知機能改善効果も期待できる。ムスカリン性アセチルコリン受容体に対する拮抗作用は弱く,既存のMARTAと比較して抗コリン性の副作用が少ないと考えられる。さらに,体重増加,代謝性パラメータおよび血中プロラクチンに対する影響が少ないといった特徴がある。また本剤は舌下錠であり,口腔内から吸収されるため,水なしでの服薬が可能である。