特集 睡眠科学の新潮流
6.睡眠覚醒調節におけるオレキシンの役割
山中章弘
1
1名古屋大学環境医学研究所ストレス受容・応答研究部門神経系分野2(神経性調節分野)・教授
pp.657-660
発行日 2017年2月1日
Published Date 2017/2/1
DOI https://doi.org/10.20837/1201702097
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覚醒するべき時に覚醒ができずに眠ってしまうと,千載一遇のチャンスを逃してしまうだけでなく,時には生命すら危うくなることもある。この覚醒を制御しているのが,神経ペプチド「オレキシン」を産生するオレキシン神経である。オレキシン神経が特異的に脱落すると,覚醒を維持できなくなる「ナルコレプシー」という病気を発症する。オレキシン神経は,視床下部に少数の細胞体が存在するが,そこから脳のほとんどの領域に軸索を投射している。特に覚醒を引き起こす神経群に密に投射し,それらを活性化することで覚醒維持に寄与している。近年,オレキシンが作用する受容体を阻害する薬物が,睡眠薬として上市された。ここでは,睡眠覚醒調節におけるオレキシンの役割から,オレキシン受容体阻害薬の作用メカニズムについて説明する。