増大特集 脳とからだ
Ⅳ.内分泌系と脳の相互作用
うつと糖尿病の悪循環を防止するオレキシン系を介した睡眠・覚醒調節機構
笹岡 利安
1
,
恒枝 宏史
1
Sasaoka Toshiyasu
1
,
Tsuneki Hiroshi
1
1富山大学病態制御薬理学
キーワード:
糖代謝
,
エネルギー代謝
,
肥満
,
インスリン抵抗性
,
睡眠障害
Keyword:
糖代謝
,
エネルギー代謝
,
肥満
,
インスリン抵抗性
,
睡眠障害
pp.478-480
発行日 2021年10月15日
Published Date 2021/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425201420
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生活習慣や社会構造が急速に変化した現代社会では,うつ病と肥満・2型糖尿病患者が増加しており,しかもこれらの疾患の発症と進展は連関している1)。インスリン抵抗性や2型糖尿病ではうつの発症と進展は増大し,うつや不眠を伴うと糖尿病は増悪する。しかし,うつとインスリン抵抗性や2型糖尿病を結びつける因子は未知な点が多い。視床下部神経ペプチドのオレキシンは,睡眠・覚醒を制御してエネルギー・糖代謝の恒常性維持に重要な役割を担う。オレキシン神経系の活動は,喜びや怒りなどの情動の感情や社会的活動により高まる一方,うつ状態では低下し,うつ患者の脳脊髄液中オレキシン濃度は低下していることが知られている。本稿では,糖尿病とうつを結ぶ因子としてオレキシンに着目し,オレキシンによる糖代謝調節や,通常およびストレス下におけるインスリン抵抗性防御効果について,筆者らの知見を中心に概説する。
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