特集 最新のがん免疫療法
1.序~がん免疫療法の歴史的経緯と今後~
松島綱治
1
1東京大学大学院医学系研究科分子予防医学分野・教授
pp.1045-1048
発行日 2016年4月1日
Published Date 2016/4/1
DOI https://doi.org/10.20837/1201604065
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CTLA-4(細胞傷害性Tリンパ球抗原-4)やPD-1/PD-L1(programmed cell death-1/programmed cell death ligand-1)などの免疫チェックポイント分子に対する阻害抗体治療や,CD19に対するキメラ抗原受容体(CAR)-T細胞治療が,がん種が限定的とはいえ,劇的な臨床効果を示すことが判明し,がん治療領域に大きなパラダイムシフトをもたらした。長らく,「がんに免疫はあるのか」,「免疫でがんは制御できるのか」の議論に終止符が打たれ,免疫抑制をもたらす細胞・分子を除去・制御し,既にがん患者に存在するCTL(細胞傷害性T細胞)を活性化するだけで,大きな臨床効果をもたらすことができると判明したのである。また,従来の化学療法剤と違い,休薬後もその効果が長期にわたることが大きな特徴である。 今や,がん抗原非特異的免疫細胞療法から,個々の患者における腫瘍特異的・固有のアミノ酸変異を標的としたCTL,ワクチン療法が提案され,また,癌細胞選択的発現分子に対するCAR-T細胞療法,抗体療法開発が世界的に展開されている。