第 III 部 治療における最近の新薬の位置付け〈薬効別〉~新薬の広場~
乳癌治療薬
武井寛幸
1
1日本医科大学大学院医学系研究科乳腺外科学分野・教授/日本医科大学付属病院乳腺科・部長
pp.361-369
発行日 2014年1月31日
Published Date 2014/1/31
DOI https://doi.org/10.20837/1201413361
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2013年に本邦で承認されたペルツズマブ,さらに近い将来,承認される予定のT-DM1(トラスツズマブ-エムタンシン)およびエベロリムスは,ともに分子標的薬剤であり,乳癌治療において大きな役割が期待されている。ペルツズマブはHER2(human epidermalgrowth factor receptor 2)陽性,進行再発乳癌の一次治療としてトラスツズマブと併用することで,有害事象を増やさず,生存率を改善することが可能となる。T-DM1はトラスツズマブ耐性乳癌において現在の標準治療であるラパチニブおよびカペシタビンに比べ生存率を向上させ,副作用も少ない。現在,進行再発乳癌の一次治療としての有用性も検討されている。
エベロリムスは乳癌の増殖において鍵となるPI3K(phosphatidylinositol-3 kinase)/Akt/mTOR(mammalian target of rapamycin)経路を阻害する。この経路を介して増殖因子シグナルとエストロゲンシグナルのクロストークがなされており,これが薬剤耐性の機序の一つとなっている。エベロリムスはその耐性を解除することが可能な薬剤であると考える