消化器疾患診療支援のための栄養療法の最先端
腸管免疫と消化器疾患
深柄 和彦
1
1東京大学医学部附属病院 手術部
キーワード:
IgA
,
NF-Kappa B
,
静脈栄養
,
消化器疾患
,
大腸炎-潰瘍性
,
腸
,
腸粘膜
,
免疫
,
バクテリアルトランスロケーション
,
Extracellular Signal-Regulated MAP Kinases
,
腸内細菌叢
,
腸関連リンパ系組織
Keyword:
Gastrointestinal Microbiome
,
Colitis, Ulcerative
,
Digestive System Diseases
,
Immunoglobulin A
,
Immunity
,
Intestinal Mucosa
,
Intestines
,
Parenteral Nutrition
,
NF-kappa B
,
Bacterial Translocation
,
Extracellular Signal-Regulated MAP Kinases
pp.1147-1152
発行日 2014年6月20日
Published Date 2014/6/20
DOI https://doi.org/10.19020/J01937.2014261356
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
腸管粘膜は,物理的,免疫学的バリアによって,腸管内腔に大量に存在する病原体や毒素の侵入を阻んでいる.侵襲時に腸管のバリア機構が破綻すると,これらが血液中,リンパ液中に侵入し,全身性の炎症反応や感染症を引き起こすと考えられている.この現象はバクテリアルトランスロケーションと呼ばれ,侵襲に続発して生じる臓器障害の重要な機序の一つと考えられている.一方,大きな侵襲が加わっていない状況でも,腸管のバリア機構をすり抜けてさまざまな腸内細菌や抗原が腸管組織内に侵入している.健常時には,これらの抗原に対し生体は免疫寛容を示し,過剰な炎症反応が生じない.しかし,免疫寛容が失われると,腸管免疫系の異常活性化によって腸管組織に慢性炎症が生じてしまう.慢性炎症は,炎症性腸疾患や腸上皮のがん化につながる.絶食下に静脈栄養管理を行うことで,腸管免疫系の異常活性化の鎮静化が期待されるが,それと同時に腸管バリア機構の低下を惹起するおそれもある.
Copyright © 2014, Nihon Medical Center, Inc. All rights reserved.