胃癌リスク診断を巡って-現状と問題点
胃癌リスク診断の検診への応用と課題 発見癌からみた胃癌リスク診断の妥当性の検討
入口 陽介
1
,
小田 丈二
,
水谷 勝
,
高柳 聡
,
冨野 泰弘
,
山里 哲郎
,
山村 彰彦
1東京都がん検診センター 消化器内科
キーワード:
ヘリコバクター感染症
,
Helicobacter pylori
,
Pepsinogens
,
胃炎-萎縮性
,
胃腫瘍
,
胃切除
,
細菌抗体
,
集団検診
,
腫瘍侵入性
,
腹部X線診断
,
結果再現性
,
リスク評価
,
未分化癌
,
腫瘍の早期診断
Keyword:
Antibodies, Bacterial
,
Carcinoma
,
Gastrectomy
,
Gastritis, Atrophic
,
Mass Screening
,
Pepsinogens
,
Neoplasm Invasiveness
,
Radiography, Abdominal
,
Stomach Neoplasms
,
Reproducibility of Results
,
Helicobacter pylori
,
Helicobacter Infections
,
Risk Assessment
,
Early Detection of Cancer
pp.1169-1176
発行日 2013年6月20日
Published Date 2013/6/20
DOI https://doi.org/10.19020/J01937.2013284986
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過去5年間に当センターで経験した胃癌571例を対象として,治療前に行った血清Helicobacterpylori(H.pylori)抗体とペプシノゲン(PG)法によってABCD分類を行った.各群の占める割合は,A群:11.6%,B群:27.8%,C群:53.1%,D群:7.5%で,C群が半数以上を占めていたが,低リスク群と考えられているA群が11.6%を占めていた.深達度を早期癌率で比較すると,A群は75.8%でもっとも低率であった.肉眼型,組織型では,A,B群は,陥凹型,未分化型が多く,C,D群は,隆起型の分化型癌の割合が高いため早期癌率も高率であった.したがって,現行のABCリスク分類は,高リスク群の対象集約に有用性が高く発見効率に寄与できるが,低リスク群については,画像検査が不要といえるほどに精度は高くなかった.A群を分析するとH.pylori未感染群だけでなく,既感染(自然除菌)群も混在していた.現在,わが国は,医療の高度化が顕著で医師不足が深刻な問題であり,胃癌のmass screeningに内視鏡医の労働力を導入するには十分な配慮が必要であり,X線検査に対して医師が行う内視鏡検査の診断精度の優位性は保っていなければならない.したがって,対策型検診では,厚生労働省が提唱するチーム医療として,検診の有効性が認められている処理能力の高いX線検診のさらなる精度向上と,医師のみが行える内視鏡検査を,リスク分類と組み合わせて,より効率的ながん検診を構築していくことが重要である.
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