特集 腸内細菌をめぐって
Ⅴ.腸内細菌を標的とした消化器疾患の治療法
藤谷 幹浩
1
1旭川医科大学内科学講座消化器血液腫瘍制御内科学分野
キーワード:
腸内細菌叢
,
プロバイオティクス
,
プレバイオティクス
,
炎症性腸疾患
,
大腸癌
,
潰瘍性大腸炎
,
クローン病
Keyword:
腸内細菌叢
,
プロバイオティクス
,
プレバイオティクス
,
炎症性腸疾患
,
大腸癌
,
潰瘍性大腸炎
,
クローン病
pp.341-350
発行日 2017年7月20日
Published Date 2017/7/20
DOI https://doi.org/10.19020/INT.0000000081
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腸管疾患をはじめ多くの疾患の病態に腸内細菌叢の異常が関係しており,これを標的とした治療法が実臨床へと応用されるようになった.おもな治療法としては,抗菌薬を用いるものとプロバイオティクスやプレバイオティクスによるものがある.抗菌薬を用いた治療としては,特定の菌によって惹起される腸管感染症に加え,潰瘍性大腸炎患者の腸内に多く存在するFusobacterium varium を標的としたATM 療法が臨床応用されており効果が確認されている.一方で抗菌薬は菌叢の異常を惹起することも知られており対象症例を慎重に選択する必要がある.プロバイオティクスやプレバイオティクスは抗生剤起因性腸炎などの急性腸炎に対して予防効果が認められている.また,過敏性腸症候群に対しても治療効果が示されている.しかし,炎症性腸疾患などの慢性腸炎や大腸癌に対する効果については一定の見解が得られていない.プロ・プレバイオティクスはいずれも副作用が少ない特長をもち,小児・高齢者や合併症をもつ症例でも安全性の高い治療薬となりうる.また,プロバイオティクス由来物質を用いた新規治療薬の開発も進んでおり,今後の展開が期待される.
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