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第1土曜特集 腸内フローラの研究進展と臨床応用
治療への応用
炎症性腸疾患に関係する腸内細菌についての知見
Findings related to gut bacteria in relation to inflammatory bowel disease
上小鶴 孝二
1
,
新﨑 信一郎
1
Koji KAMIKOZURU
1
,
Shinichirou SHINZAKI
1
1兵庫医科大学消化器内科学講座
キーワード:
炎症性腸疾患(IBD)
,
腸内細菌
,
糞便移植
,
プレバイオティクス
,
プロバイオティクス
Keyword:
炎症性腸疾患(IBD)
,
腸内細菌
,
糞便移植
,
プレバイオティクス
,
プロバイオティクス
pp.413-418
発行日 2024年11月2日
Published Date 2024/11/2
DOI https://doi.org/10.32118/ayu291050413
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炎症性腸疾患(IBD)は,狭義には潰瘍性大腸炎(UC)とクローン病(CD)に大別される.UCは大腸に限局した炎症所見を有し,CDは口から肛門までに非連続性に認める炎症所見を有する点が異なる特徴であるが,両疾患とも好発年齢が若年期であり,再燃と寛解を繰り返し,完治する薬剤が存在しない慢性疾患である.現在,わが国ではUCは約22万人,CDは約7万人が罹患しているといわれ,若年期に発症することもあり,社会生活に影響を及ぼすことが問題となっている.IBDの発症原因は家庭内発症や多数の遺伝因子から遺伝子的素因,また食事や栄養,ストレスなどの環境因子が複合的に影響し,免疫異常から腸管の炎症として発症する多因子疾患として考えられているが,明確な発症原因は不明である.IBDへの腸内細菌の関与として,免疫関連遺伝子のノックアウトマウス(IL-2欠損マウス,IL-10欠損マウスなど)はCD類似の大腸炎を自然発症するが,無菌環境で飼育すると発症しない.しかし,無菌下で飼育されたこれらのマウスを通常の飼育に戻すと腸炎を発症する.このことは,腸炎の発症に腸内細菌が何らかの重要な役割を果たすと考えられている根拠となる.近年では,遺伝子解析により,ヒトと腸内細菌の共生の破綻,腸内細菌叢の菌種構成や菌種数・菌数の異常(dysbiosis)がIBDの発症に関係していることが明らかとなってきた.
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