特集 脂肪肝の新概念:MASLD
7.MASHの治療(2)ルビプロストンによる腸管バリア治療
結束 貴臣
1,2,3
,
小林 貴
3
,
中島 淳
3
1国際医療福祉大学成田病院消化器内科
2国際医療福祉大学成田病院緩和医療科
3横浜市立大学医学部医学科肝胆膵消化器病学教室
キーワード:
NASH
,
腸内細菌
,
腸管透過性
,
leaky gut
,
エンドトキシン
,
dysbiosis
Keyword:
NASH
,
腸内細菌
,
腸管透過性
,
leaky gut
,
エンドトキシン
,
dysbiosis
pp.804-812
発行日 2024年6月20日
Published Date 2024/6/20
DOI https://doi.org/10.19020/CG.0000003084
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エンドトキシンに注目したMASLD/MASHの病態進展メカニズムや治療に対する研究が進みつつある.血中のエンドトキシンをめぐるMASLD進展の要因は大きく腸管側の要因と肝臓側の要因の二つに分けられる.腸管側の要因として,① 腸管バリアの破綻(leaky gut症候群),② 腸内細菌叢の乱れ,③ 内因性エタノール産生の増加が重要で,肝臓側の要因として,肥満を呈する高レプチン血症がNASH患者のエンドトキシンに対する過剰応答によって肝内炎症や線維化が進展する.現状MASLD/MASHの新規薬剤治験はおもに代謝,抗炎症,抗線維化といった肝臓を中心とした作用機序を標的とした治療法の開発である.一方,腸管バリアの破綻による高エンドトキシンがMASLD/MASH進展に関与すると仮説を立てた.基礎研究やヒトの研究では慢性便秘症の治療薬であるルビプロストンが腸管バリアを改善させるとの報告があり,われわれは世界で初めて,ルビプロストンを用いてランダム化二重盲検プラセボコントロール医師主導試験を実施した.その結果,ルビプロストン1回12μg,1日1回・12週間の投与は,腸管バリアを改善し,肝機能および肝脂肪化を有意に改善させた.腸管バリアが今後,MASLD/MASHの新たな治療標的になっていく可能性が示唆された.
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