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“腸管感染症”の大半は腸粘膜に炎症を伴っていることより,“感染性腸炎”が同義語のように用いられることもある.腸管感染症は起因病原体によって細菌性,真菌性,寄生虫性,ウイルス性に分類される.また,臨床経過により急性と慢性に分けられ,細菌性腸管感染症の多くは急性の経過をたどり2〜3週で自然治癒傾向を示すため,欧米ではacute self-limited colitisと言われているが,サルモネラ腸炎やエルシニア腸炎は遷延化する場合がある.一方で,慢性の経過をたどるものとして,腸結核やアメーバ性大腸炎などがよく知られているが,他の寄生虫性腸管感染症でも病原体が駆逐されなければ症状は慢性的である.
腸管感染症のうち日常診療でよく遭遇するのは,カンピロバクター腸炎,サルモネラ腸炎,腸炎ビブリオ,病原性大腸菌腸炎,エルシニア腸炎など,急性胃腸炎型の細菌性腸管感染症である.C. difficile(Clostridium difficile)腸炎やMRSA(methicillin resistant Staphylococcus aureus)腸炎は抗菌薬の多用による菌交代現象,長期入院者の院内感染や高齢者などの場合に好発する.サイトメガロウイルス(cytomegalovirus;CMV)腸炎,MAC(Mycobacterium avium complex)腸炎,糞線虫症,イソスポーラ症,ランブル鞭毛虫症,クリプトスポリジウム症,真菌性腸炎などの多くは宿主の免疫力低下による日和見感染症である.性行為感染症(sexually transmitted disease;STD)による腸炎には,アメーバ性大腸炎の約30%,梅毒性や淋菌性腸炎,クラミジア直腸炎,尖圭コンジローマ直腸炎などがある.
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