透析患者の消化管疾患AtoZ 総論
11 栄養療法
加藤 明彦
1
1浜松医科大学医学部附属病院血液浄化療法部
キーワード:
protein―energy wasting
,
栄養スクリーニング
,
経口栄養サポート
,
透析時静脈栄養
Keyword:
protein―energy wasting
,
栄養スクリーニング
,
経口栄養サポート
,
透析時静脈栄養
pp.918-923
発行日 2021年8月25日
Published Date 2021/8/25
DOI https://doi.org/10.19020/CD.0000001835
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透析患者では食欲低下などの消化器症状による栄養障害を高率に合併し,総死亡を含む予後に重大な悪影響を及ぼす.そのため,長期にわたって栄養補充が必要となる場合がある.透析患者における栄養障害のおもな原因を表1に示す.これらのうち,とくに炎症は栄養障害と密接に関連する.透析患者では,血液とダイアライザ膜の接触によるリンパ球の活性化,酸化ストレスやカルボニルストレスの増大,尿毒症環境などにより,血管内皮細胞や単球から炎症性サイトカインが放出され,慢性的な炎症状態(inflammaging)を呈しやすい.炎症性サイトカインは体内に貯蔵した糖質,アミノ酸,脂肪酸を分解し,エネルギー源として利用するため,体脂肪や骨格筋量が減少する.炎症が主役である栄養障害は,動脈硬化性病変を合併しやすいため, malnutrition, inflammation and atherosclerosis(MIA)症候群と呼ばれる.しかし,実際は炎症以外にも尿毒素の蓄積,代謝亢進,経口摂取量の低下などの複数の要因が関連している.そこで,2006年に国際腎栄養代謝学会からすべての腎臓病患者の栄養障害をprotein―energy wasting(PEW)と呼ぶことが推奨され,現在に至っている.
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