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はじめに
今,医療機関はハラスメントトラブルに苦慮している。職員間でのパワハラ・セクハラ・マタハラ(職員間ハラスメント),患者家族から医療者へのペイシェントハラスメント(ペイハラ)などがそれである(なお,ペイシェントハラスメントとは,“患者・家族が医療者に対し,正当な医療行為を妨害する暴言・暴力・性的言動,いじめ・嫌がらせなどの行為をすること” を意味する)。職員間ハラスメントは医療機関内部の組織の問題として対処していくことになるが,ペイハラトラブルの相手方は,外部者としての患者家族であるだけに,その向き合い方が難しく,その対応しだいでは思いもよらない方向に紛争が拡がっていくことがある。
患者家族との向き合い方を考えるうえでは,患者家族の医療者に対する “悪感情” や “誤解” が,ペイハラトラブルの最大の原因または増大の要因であることを認識する必要がある(これは医療事故に基づくハラスメントトラブルが典型である)。ペイハラトラブルは,医療者と患者家族との間の信頼関係が欠如し,または希薄化してしまったところに惹起される “医療行為や医療外行為に由来する争い事” であり,医療者側の何らかの過誤・過ち,そのことについての患者家族の誤解によって発生することが多いのである。その根底にはこれらに関わる患者家族の医療者に対する “悪感情”(医師や看護師に対する不信感・怒り・憎しみなど)があることは間違いない。
これに対し医療者側は,“常識ある言動” によってペイハラトラブルを回避しまたは解決しなければならない。医療者は,普段から “軽率で不用意な言動” を慎み,人間社会において人としてとるべき “常識的な対応” を心掛け,患者家族との間の誤解を回避し,患者家族に悪感情を惹起させないように努力する必要がある。また,トラブルになっても “心からの謝罪などの真摯で常識ある言動” によって対応しなければならない(もちろん,そういう対応で対処できないパーソナリティー障害などメンタルヘルスに問題を抱えた患者家族などに対しては,ほかの対処法を考える必要がある)。
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