特集 フローチャートでわかる 婦人科外来診療パーフェクトブック
Ⅱ 感染症
24.骨盤内炎症性疾患(PID)―子宮付属器炎を含む
加藤 育民
1
Y. Kato
1
1旭川医科大学産婦人科(教授)
pp.1260-1265
発行日 2024年11月1日
Published Date 2024/11/1
DOI https://doi.org/10.18888/sp.0000003158
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骨盤内炎症性疾患(pelvic inflammatory disease;PID)は,子宮内膜炎,子宮留膿腫,付属器炎,卵管卵巣膿瘍,骨盤腹膜炎などの子宮頸管より上部の生殖器に発生する炎症性疾患の総称である1)~5)。多彩な感染経路を有し,腹膜刺激症状による腹痛・発熱症状を主体とする感染性疾患である。診断確定のために,下腹部痛・発熱・炎症反応上昇・膿瘍など原因となる病原体の検出と,必要に応じ画像所見を行う。主な治療は,原因となる病原体に基づいた抗菌剤の投与を行う。初期症状としては,軽度から中等度の下腹部痛で,片側の痛みを認める。不規則な性器出血や感染により悪臭を伴う帯下などが認められ,性交時や排尿時に痛みを感じることもある。また,典型的な症状が揃わず無症状のこともある。重症化すると,腹部全体に圧痛を伴う激しい痛みが生じことも多い。発熱,吐き気,嘔吐を伴い,帯下は黄緑色で膿状になることもあり,敗血症性ショックにも注意が必要である。卵管周囲の感染の場合は,卵管が閉塞を起こすこともあり,液体貯留・卵管腫脹が出現し,下腹部に圧迫感や慢性的な痛みを感じることもある。感染が長期にわたり卵管に持続している場合は,卵管または卵巣にできた膿が骨盤腔に流れ出し,腹膜炎が起こることもある。
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