特集 フローチャートでわかる 婦人科外来診療パーフェクトブック
Ⅱ 感染症
25.慢性子宮内膜炎
山本 皇之祐
1
,
木村 文則
1
K. Yamamoto
1
,
F. Kimura
1
1奈良県立医科大学産婦人科
pp.1266-1270
発行日 2024年11月1日
Published Date 2024/11/1
DOI https://doi.org/10.18888/sp.0000003159
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慢性子宮内膜炎(chronic endometritis;CE)は,主に細菌の存在による軽微かつ持続的な炎症が子宮内膜で起こっている状態である。長らく無菌状態と考えられていた子宮内腔であるが,次世代シーケンサーの発展により,子宮内腔にも細菌が存在することが明らかとなった。子宮や卵管など,女性の上部生殖器は特定の細菌叢を有しており,これが子宮内膜細胞と局所免疫系の両方の機能を調節していると考えられる。CEはこの機構が破綻し,子宮内に病原微生物が存続することで,免疫学的応答が持続的に起こっている状態であるといえる。臨床的には,無症状であるか,非特異的な症状(骨盤痛や軽度の子宮出血など)がみられることがある。このように症状が比較的乏しいこと,臨床的な意義が長らく見出されていなかったこと,さらに診断には子宮内膜組織が必要で,その採取には患者に負担がかかることから軽視されていたが,近年,着床障害や妊娠予後との関連が示唆されており,生殖医療分野を中心に注目されている1)。
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