特集 胎盤の科学がもたらす周産期疾患の新たな理解
10.脱落膜機能不全に伴う病態を考慮したRPOCの対応
山口 宗影
1
,
近藤 英治
1
M. Yamaguchi
1
,
E. Kondo
1
1熊本大学生命科学研究部産科婦人科学
pp.1133-1141
発行日 2023年11月1日
Published Date 2023/11/1
DOI https://doi.org/10.18888/sp.0000002733
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胎盤形成において,子宮内膜間質細胞は脱落膜細胞へ分化し,絨毛を構成するトロホブラストの浸潤制御やらせん動脈の血管新生に関与する。これらの機構の障害との関与が指摘されている生殖補助医療後の妊娠や癒着胎盤スペクトラムは,retained products of conception(RPOC)のリスク因子であることが明らかとなってきた。RPOCの主な病態は,トロホブラストの遺残とらせん動脈の拡張であり,血流を伴うRPOCは出血のリスクを評価し,適切に対応する必要がある。RPOCは,血清プロゲステロン値の上昇に伴い自然軽快する。子宮内膜を伴うRPOCに対しては,らせん動脈周囲の子宮内膜間質細胞に作用するプロゲストーゲンが有効である可能性があるが,子宮内膜を欠くRPOCに対しては効果が乏しい。RPOCは,胎盤形成時の脱落膜機能不全に伴いトロホブラストが遺残し,妊娠終了後に遺残部位周囲のらせん動脈が拡張するという病態を理解し,個々の症例に応じた治療を選択する必要がある。
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