特集 エビデンスと経験が紡ぐ未来の産科診療―科学的探究がもたらす新たな視点
10.妊娠組織遺残(RPOC)
山口 宗影
1
M. Yamaguchi
1
1熊本大学大学院生命科学研究部産科婦人科学(特任准教授)
pp.395-402
発行日 2025年4月1日
Published Date 2025/4/1
DOI https://doi.org/10.18888/sp.0000003363
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妊娠組織遺残(retained products of conception;RPOC)のうち,血流を伴うvascular RPOC(vRPOC)は出血リスクが高く,その管理が困難となる場合があり,標準化された治療指針は確立されていない。vRPOCの発生機序として,残存するトロホブラストに起因する異常ならせん動脈の拡張が関与している可能性が示唆される。vRPOC症例では,血清プロゲステロン値の上昇に伴い,止血および血流の消失が認められる。このため,破綻出血に対して止血効果の高いノルエチステロンを含むエストロゲン・プロゲストーゲン療法(estrogen-progestogen therapy;EPT)は,子宮内膜間質細胞の脱落膜化を誘導し,vRPOCに対して治療効果を示すと考えられる。一方で,子宮内膜を欠くvRPOCに対しては効果が乏しく,EPTの適用には一定の限界がある。したがって,vRPOCに対するEPTの選択に際しては,子宮内膜の存在や着床部位を慎重に評価する必要がある。

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