特集 図解 分子メカニズムから理解する婦人科がんの薬物療法
【総論】
Ⅰ 婦人科における抗悪性腫瘍薬の種類と特徴
3.アルキル化薬:シクロホスファミド,イホスファミド
濵西 潤三
1
,
万代 昌紀
1
J. Hamanishi
1
,
M. Mandai
1
1京都大学大学院医学研究科婦人科学産科学教室
pp.1238-1243
発行日 2021年11月30日
Published Date 2021/11/30
DOI https://doi.org/10.18888/sp.0000001927
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アルキル化薬は,DNAのアルキル化によって,核内の2本のDNAに架橋を形成(鎖間クロスリンク)することによりDNAの複製を妨げ細胞死を誘導する細胞傷害性抗がん薬であり,マスタード系(シクロホスファミド,イホスファミドなど)と尿素系(ニムスチン,ラニムスチン)に大別される。前者は,第一次大戦中に化学兵器として使用されたマスタードガスに由来するナイトロジェンマスタードを軸として研究・開発が進んだ薬剤であり,人類が最初に手にした抗がん薬である。そのきっかけとなったのは,1919年Krumbhaarらが皮膚びらんを誘発する兵器として使用されていたマスタードガスによって骨髄やリンパ節からリンパ球が消失することを発見したことから始まった1)。その後イェール大学のMilton Winternitzはマスタード系の合成物質を複数種作成し,その1つであるナイトロジェンマスタードを用いて同大学薬理学者のAlfred GilmanとLouis Goodmanらがリンパ腫担持マウスでの抗腫瘍効果を確認し,さらに1943年に共同研究者の胸部外科医Gustaf Lindskogが気道狭窄を伴う非ホジキンリンパ腫患者ほか数名に同薬を投与し有効性を示した。この成果から,chlorambucilやシクロホスファミドの経口薬などの開発も始まった2)。
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