特集 図解 分子メカニズムから理解する婦人科がんの薬物療法
【総論】
Ⅰ 婦人科における抗悪性腫瘍薬の種類と特徴
2.タキサン製剤:パクリタキセル,ドセタキセル
村上 幸祐
1
K. Murakami
1
1近畿大学医学部産科婦人科学教室
pp.1231-1237
発行日 2021年11月30日
Published Date 2021/11/30
DOI https://doi.org/10.18888/sp.0000001926
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タキサン製剤の歴史は非常に古い1)。1960年から1981年まで,米国のNational Cancer Institute(NCI)と農務省が共同で,抗がん作用をもつ植物を探索するプロジェクトが行われた。このプロジェクトのなかで,1966年に,タイヘイヨウイチイの樹皮から抽出された成分が細胞傷害性を持つことが発見され,1969年に抽出物からパクリタキセルが分離・同定された(図1a)。1970年代には製剤化され,1980年代には臨床試験が開始された。1991年には商品化のため,ブリストル・マイヤーズ・スクイブ社がNCIから選ばれ,世界的な開発に着手した。卵巣癌に対しては1992年に米国食品医薬品局(FDA)に承認され,以後,乳癌・非小細胞肺癌・頭頸部癌・食道癌・胃癌など様々ながんに使用されている。日本では,1997年に卵巣癌に対して保険適用となっている。このように,パクリタキセルは非常に長い歴史をもつ薬剤であるが,進行卵巣癌に対する化学療法として,パクリタキセルとプラチナ製剤との併用が今なお世界の標準治療である2)3)。また日本では,子宮体癌に対して2005年に,子宮頸癌に対して2012年に保険適用されており,婦人科領域で最もよく使用されている重要な抗がん薬の1つであるといえる。
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