症例
分類不能型腸炎として治療中の病初期から抗インテグリンαvβ6抗体価が上昇していた潰瘍性大腸炎の男子例
松井 瞳
1
,
田中 孝之
1
,
中島 光司
1
,
青山 育雄
2
,
前田 由可子
3
,
日衛嶋 栄太郎
3
,
角田 洋一
4
,
末廣 穣
1
,
石塚 潤
1
,
大封 智雄
1
,
赤杉 和宏
1
,
美馬 隆宏
1
,
樋口 嘉久
1
1大津赤十字病院小児科
2大津赤十字病院消化器内科
3京都大学医学部附属病院小児科
4東北大学大学院医学系研究科消化器病態学分野
pp.1083-1089
発行日 2025年10月1日
Published Date 2025/10/1
DOI https://doi.org/10.18888/sh.0000003603
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潰瘍性大腸炎(ulcerative colitis:UC)は炎症性腸疾患(inflammatory bowel disease:IBD)のひとつであり,腹痛や下痢・血便といった臨床症状,血液検査所見,大腸内視鏡検査所見などに基づき総合的に診断される1).小児患者では内視鏡検査所見が非典型的で診断確定が難しいことも多い2).UCもしくはクローン病(Crohn disease:CD)の診断基準を満たさないが部分的に合致する症状・検査所見を呈する症例は,分類不能型腸炎(inflammatory bowel disease-unclassified:IBD-u)と診断され1),当初IBD-uと診断された症例のうち一定数はその後の経過観察中にUC,CDと診断が確定する3).多くの小児患者の内視鏡検査では鎮静を必要とし,患者への負担が小さくないがIBDが疑われる患者に対する,より侵襲性の低い検査として血清・尿,あるいは便のバイオマーカーの開発が進んでおり4)~9),内視鏡検査を施行するべき患者を絞り込むための補助として役立つ.近年日本で同定された抗インテグリンαvβ6抗体(V6抗体)や抗血管内皮細胞プロテインC受容体(Endothelial Protein C Receptor:EPCR)抗体は,UCで陽性率が高く,抗体価がUCの疾患活動性と相関するが4)~6),これらの新規バイオマーカーの推移が,IBD-u症例の症状・検査所見の推移とどのように関連するかはまだ十分に評価されていないため,本症例の経過を報告する.

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