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神経内分泌系腫瘍の成人に発生するカルチノイド,インスリノーマ,褐色細胞腫などが小児にみられることはきわめてまれであり,代表的なものは神経芽腫群腫瘍である.神経芽腫群腫瘍には神経芽腫,神経節芽腫,神経節腫が含まれるが,前者2つの腫瘍が悪性疾患であり,神経節腫は分化傾向を示す良性腫瘍に分類される.これらの神経芽腫群腫瘍はカテコールアミン産生性の腫瘍である.カテコールアミンはチロシンから生成され,ホモバニリン酸(homovanilic acid:HVA)はドーパ,ドーパミンがCOMT(catexhol-O-methyltransferase),MAO(monoamine oxisdase)などの酵素によって代謝された最終代謝産物である.バニルマンデル酸(vanilmandelic acid:VMA)は同じくCOMT,MAOなどによってアドレナリン,ノルアドレナリンから生成された代謝産物であり,いずれも尿中に排泄される(図).これらの尿中VMA,HVAは,一部の褐色細胞腫で高値を示すものの,神経芽腫,神経節芽腫の85~90%の症例で高値を示し特異度はきわめて高く,診断時腫瘍マーカーとして有用である1).さらに,治療効果の判定や再発の評価においても有用である.良性腫瘍の神経節腫においても異常値を示すことがあるが,比較的低値である.尿中のVMA,HVAの定量は高速液体クロマトグラフィー(high performance liquid chromatography:HPLC)法にて測定されるが,微量であることや日内変動があることから,24時間蓄尿が望ましいとされている.しかし,乳幼児では蓄尿が難しいため,部分尿で測定した値を尿中クレアチニンで補正した値を通常用いている.したがって測定値の単位はμg/mg. creとなるが,尿中クレアチニンが低値の尿ではVMA,HVAが偽高値となり,クレアチニンが高値の尿では偽低値となるので不適当な尿となる.バナナ,バニラを含む食品,薬剤の摂取はこれらの値に影響を及ぼすので測定数日前は摂取を控える必要がある.さらに採尿後の分解を防ぐために,尿は6規定の塩酸を加え冷所で保存する必要がある.神経芽腫の腫瘍マーカーとして用いる場合は,尿中VMA,HVAの同時測定が望ましい.
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