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あらゆる臨床検査は,“適切な検体採取” から始まる.血液検査のなかでもとくに凝固・線溶系検査は,適切な量で適切な時期に,新生児と小児に対して行うことは容易でない.不適切な手技や血管の虚脱から血液採取速度が遅くなると,血液が凝集し検査結果に多大な影響を及ぼす.穿刺針から直接滴下採血を行う場合,組織因子(tissue factor:TF)が混入して誤った検査結果を生む可能性がある.したがって,血液は先に凝固・線溶系検査以外のスピッツに速やかに採取し,その後に凝固・線溶系検査用のスピッツに採取する.採血困難な場合に動脈ラインや中心静脈ラインから採血を行うこともあるが,わずかでもヘパリンが混入する可能性があるため凝固・線溶系の評価には避けたい.凝固・線溶系の検査には0.105~0.109M(3.13~3.2%)クエン酸ナトリウム溶液が添加された採血管を用いる.一般的な凝固・線溶系検査のスピッツはクエン酸ナトリウム溶液量:採血量=1:9となるように減圧されており,採血量が厳密に定められている(許容範囲は±10%以内).滴下採血を行う場合はスピッツの蓋を開けるため,目視で正しい採血量をあらかじめ確認しておく.採血量不足はクエン酸ナトリウム過剰による再Ca化不足から活性化部分トロンボプラスチン時間(activated partial thromboplastin time:APTT)などが偽延長する.また,新生児やヘマトクリット値が高い(55%以上)患児は,相対的に血漿成分が減少するため凝固時間が延長する.この場合はClinical and Laboratory Standards Instituteのガイドラインにあるノモグラム換算図表を用いて採血管のクエン酸ナトリウムの液量を調節する必要がある1).ループスアンチコアグラント検査は,採血量が少なすぎると血漿中の残存血小板が混入することによって,正しい結果を得ることができなくなる.小児,とくに新生児や早産児では一度に多量の血液を迅速に採取することが難しく,また繰り返しの採血は容易に医原性貧血を引き起こす.
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