連載 誌上ディベート TAPP法におけるヘルニア門の処理
第2回:ロボット支援鼠径部ヘルニア修復術 2.腹膜環状切開の立場から
早川 俊輔
1
,
瀧口 修司
1
1名古屋市立大学大学院医学研究科消化器外科学
キーワード:
R-TAPP
,
環状切開
,
鼠径ヘルニア
Keyword:
R-TAPP
,
環状切開
,
鼠径ヘルニア
pp.1414-1421
発行日 2024年7月15日
Published Date 2024/7/15
DOI https://doi.org/10.18888/op.0000004000
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ロボット支援鼠径ヘルニア修復術(robotic-assisted transabdominal preperitoneal groin hernia repair;R-TAPP)は2007年にFinleyらによって初めて報告され,欧米では多数の症例が施行されている1)。近年,わが国においても導入施設が増加しており,2023年には岡本らによって307例の日本国内の後方視的多施設研究の結果が報告され,わが国においてもR-TAPPの安全な導入と施行がなされている現状が示された2)。残念ながら,いまだ保険収載には至っていないが,近い将来に保険収載となった際には多くの症例が,広範な施設でさまざまな年次の術者によって施行されると予測される。きたるべき保険収載後に備えて,より安全な術式を考案し,議論を深め,ブラッシュアップをしていくことが早期からR-TAPPを導入している施設の社会的責務と考える。R-TAPPの術式を開発するうえで,環状切開と高位切開という2つのアプローチが存在していることは,より正確な解剖学的理解や適切な術式を考えていくうえで好都合であると感じている。環状切開法はこれまでわが国特有の術式と考えられてきた。しかし,近年米国ではL型の鼠径ヘルニアに対してヘルニア嚢の完全切除を行わなず,環状に腹膜を切開する術式をabandon sacと呼称し,新たな術式として急速に報告が増加している3)。わが国で従来から行われている環状切開も今後世界的に注目される可能性もあり得る。
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