特集 病態から考える薬物療法
第XVI章 動物性疾患
1 マダニ刺咬症
橋本 喜夫
1
Yoshio HASHIMOTO
1
1旭川厚生病院,皮膚科
キーワード:
マダニ刺咬症
,
ライム病
,
重症熱性血小板減少症候群
,
皮膚科的切除
,
予防的抗菌薬
Keyword:
マダニ刺咬症
,
ライム病
,
重症熱性血小板減少症候群
,
皮膚科的切除
,
予防的抗菌薬
pp.936-939
発行日 2022年4月20日
Published Date 2022/4/20
DOI https://doi.org/10.18888/hi.0000003295
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一般にマダニは蛛形綱ダニ目,マダニ科に属する一時寄生性のダニ類で,日本ではマダニ属,キララマダニ属,チマダニ属,カクマダニ属,コイマダニ属など約40種類が知られており,一般にhard tickとよばれる。これらのマダニはその生活環のなかで多くて一生に3度,主に小動物(野鼠,小鳥)から吸血し,幼虫から若虫,成虫へと脱皮してゆく。体長は種類によって異なるが,幼虫で約1mm,若虫で約2mm,成虫は2~8mmである(図1)。雌成虫は産卵のためにさらに中・大動物(ウサギ,シカなど)へ寄生吸血する。その際たまたま人間が接触すると,マダニに刺され咬着を受けることになる。マダニがウイルス,リケッチア,ボレリアなどの病原体を保有する場合があり,これら有毒虫体の咬着を受けると,刺咬後,慢性遊走性紅斑,発熱などがときに出現し,ライム病,日本紅斑熱,ウイルス感染性の重症熱性血小板減少症候群(severe fever with thrombocytopenia syndrome,以下SFTS),ダニ媒介性脳炎などをはじめとするいくつかの感染症を続発することになる。近年ではマダニの唾液腺中にあるα-Galが注目され,マダニによる複数回の刺咬によって,経皮感作を受け,獣肉アレルギーを生じることも考慮せねばならない。
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