憧鉄雑感
第71回 差し入れする患者
安部 正敏
1
Masatoshi ABE
1
1医療法人社団廣仁会札幌皮膚科クリニック,褥瘡・創傷治癒研究所
pp.279-279
発行日 2018年2月1日
Published Date 2018/2/1
DOI https://doi.org/10.18888/hi.0000000589
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病棟の隅でニヤニヤと手招きする受け持ち患者。「先生さぁ~今夜の夕飯は食わないでいてくれよな~」斯様なことを言う。「毎日遅くまで働いているんだから,せめてもの感謝よ!」筆者が研修医時代の話である。当然,謝意とともに丁寧にお断りすると「大したもんじゃない。ちょっとさ,旨いうどんが手に入ってね。かかぁが今夜持ってくるから食ってくれ!」そんな貴重品など,迂闊に貰う訳にもいかぬ。「悪いけど,先生の分だけだから,他の先生には内緒な! 滅多に手に入らないからさ~」平素から素行に問題があり看護師から決して評判がよくないこの男は,まるで麻薬の取引が成立したが如く,周囲に警戒しながら猫背でベッドに戻っていった。
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