私の経験
デジタルデバイスの過剰使用が誘因となり,悪化がみられた部分調節性内斜視の1例
川原 朋子
1
,
近藤 玲子
1
,
金井 美佳
1
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丸田 治子
1
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新井 可奈子
1
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赤羽根 好乃
1
,
小林 未永子
1
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粕谷 友香
1
,
野口 久美子
1
,
牧野 伸二
1
1自治医科大学眼科学講座
キーワード:
部分調節性内斜視
,
デジタルデバイス
,
急性後天共同性内斜視
Keyword:
部分調節性内斜視
,
デジタルデバイス
,
急性後天共同性内斜視
pp.277-280
発行日 2025年3月5日
Published Date 2025/3/5
DOI https://doi.org/10.18888/ga.0000004092
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部分調節性内斜視の治療歴があり,デジタルデバイスの過剰使用などが誘因となり,悪化がみられた症例を経験したので報告する。症例は24歳女性,11歳時に内斜視で当院を受診。遠視性不同視があり,斜視角は近見,遠見ともに12Δの内斜視で,部分調節性内斜視として経過観察していた。13歳時の眼位はプリズム眼鏡(右眼+3.50D cyl+1.75D Ax45°,左眼+0.50D,両眼それぞれ4Δ基底外方の組み込みプリズム)を装用して内斜位であった。その後通院が途絶え,24歳時に複視と内斜視の整容的加療を主訴に再診した。両眼ソフトコンタクトレンズ(右眼+1.50D,左眼−2.25D)を装用し,眼位は近見70Δ,遠見60Δとなっており,内斜視の悪化がみられた。通院を中断していた時期について聴取すると,17歳からソフトコンタクトレンズを装用し内斜視が目立ちはじめ,さらにこの時期にスマートフォンで長時間ゲームをすることが多かったとのことだった。再診から1か月後,局所麻酔下に右眼内直筋後転6mm,外直筋短縮8mmを施行した。術後3か月の眼位は近見2Δ,遠見2Δの内斜視となり,複視は消失し,眼位の改善が得られた。融像幅は−3°から+3°,立体視は3,000″であった。本症例は両眼視機能が脆弱であったことを背景に,プリズム眼鏡装用の中断や長時間のスマートフォンの使用が誘因となり,内斜視が悪化したものと推測した。小児期からの調節性要素を有する内斜視の患者に対して,適切な眼位・屈折矯正の必要性や長時間に及ぶ近業の危険性を伝え,注意深く経過観察することが必要と思われた。

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