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我々は以前より全層角膜移植術(PKP)後の移植片不全に再移植を行う際に,虹彩面上に癒着したDescemet膜(デスメ膜)と思われる透明な膜が残存している症例を多く経験してきた。今回,PKP後早期に移植片不全に移行した症例で,移植片のデスメ膜が剥離し,虹彩と一体化していく過程を前眼部光干渉断層計(OCT)で観察することができたため報告する。患者は76歳女性。X−17年に前医で両眼のレーザー虹彩切開術(LI)を施行され,X−7年に右眼の角膜内皮細胞数減少および白内障,両眼の緑内障で当院に紹介となった。同年に右眼の白内障手術を施行,X−6年に右眼の水疱性角膜症に対して角膜内皮移植術(DSAEK)を施行した。X−2年に右眼の続発緑内障に対し線維柱帯切除術を施行した。X−1年に右眼の移植片不全に対して初回のPKPを施行した。X年に再度移植片不全へと至り,2回目のPKPを施行した。2回目のPKP後60日目の前眼部OCTでレシピエント角膜と移植片の境界を越える周辺虹彩前癒着(PAS)を認めた。術後102日目の前眼部OCTでは癒着した虹彩に牽引されるように移植片のデスメ膜が剥離し,その後デスメ膜剥離の範囲は移植片の中央部にまで至っている様子が観察された。細隙灯顕微鏡検査でも著明な角膜浮腫を認め,移植片不全に移行した。術後270日目の前眼部OCTでは移植片のデスメ膜は完全に剥離し,虹彩と一体化していた。PKP後に移植片不全へと至る機序のひとつとして,PASが中央に向かって進行することで移植片のデスメ膜が牽引され剥離し,内皮機能不全に至る可能性が示唆された。PKP後の経過中にPASを生じさせないことが移植片不全への進行を遅らせる要因のひとつであると考える。
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