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要 約
目的
当院で過去約5年間に経験した全層角膜移植術後の眼球破裂に対する治療経験をもとに,受傷時の細隙灯顕微鏡検査所見から3つに分類し,その予後を検討する。
対象と方法
2010年1月から2015年8月までに山口大学医学部附属病院で全層角膜移植術後に眼球破裂を発症して加療された症例19例21眼(男性8例8眼,女性11例13眼,平均74.0±11.3歳)を対象とし,診療録に基づき後ろ向きに検討した。受傷時の細隙灯顕微鏡検査所見からⅠ型(創哆開および虹彩脱出のみを認めるもの),Ⅱ型(Ⅰ型の所見に水晶体または眼内レンズ脱出および硝子体脱出を認めるもの),Ⅲ型(Ⅰ型,Ⅱ型の所見に加えて眼外への血腫の脱出を認めるもの)と分類し,その予後について検討した。
結果
全層角膜移植術を施行してから受傷までの期間は平均10.3±9.8年であった。13眼で受傷前に比べ受傷後最高矯正視力は低下していた。受傷時の細隙灯顕微鏡検査所見から分類すると,Ⅰ型が4眼,Ⅱ型が13眼,Ⅲ型が4眼であった。経過観察期間内に網膜剥離を認めたのはⅠ型で0眼(0%),Ⅱ型で4眼(31%),Ⅲ型で4眼(100%)であった。受傷後3か月の時点で移植片不全へと移行したものはⅠ型で3眼(75%),Ⅱ型で5眼(38%),Ⅲ型で4眼(100%)であった。移植片不全に対する再移植を行った症例は8眼(Ⅰ型が3眼,Ⅱ型が5眼)であり,そのうち7眼で再移植により視力改善を認めた。一方,受傷前矯正視力と比較して再移植後の最高矯正視力が3段階以上視力改善を得られた症例はⅠ型で3眼中3眼,Ⅱ型で5眼中0眼であり,χ2検定で有意差を認めた(P=0.0381<0.05)。
結論
全層角膜移植術後の眼球破裂について受傷時の細隙灯顕微鏡検査所見から3つに分類し,治療結果を検討した。受傷時所見がⅢ型症例の視力予後は著明に悪い。Ⅰ型とⅡ型の症例は受傷後に移植片不全へと移行した場合,再移植を施行することで視力は改善し得る。Ⅰ型症例はⅡ型症例に比べて再移植を施行することで受傷前と比較してもより視力改善が期待できる。
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