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はじめに
診断用ツールとして人工知能(AI)による解析アルゴリズムの開発が盛んである。前眼部では,角膜疾患を中心に研究用プロトタイプソフトCorneAIが開発されて高性能な診断支援を可能としている。今回我々は,炎症所見を伴わず診断に苦慮した,角膜感染症である感染性クリスタリン角膜症に,CorneAIを応用した結果を報告する。
症例
症例1,2,いずれも70歳代男性で,以下の共通の経過を持つ。複数回の濾過手術後にベタメタゾン点眼を数年間使用し,その後水疱性角膜症を発症した。前医で高度角膜実質浮腫の状態を経過観察中に,星芒状あるいは樹枝状の角膜実質混濁が出現したため,「原因不明の非感染性角膜混濁」として紹介された。当院初診時,細隙灯顕微鏡観察により実質内に大小不同の結晶状所見を多数認めたため感染性疾患を疑い,ベタメタゾン点眼を漸減,中止したところ,充血,前房蓄膿,角膜膿瘍などの感染所見が出現した。角膜擦過物の培養からは,それぞれAbiotrophia defectiva,Streptococcus mitisとStreptococcus salivariusが検出され,いずれも抗菌薬点眼による治療で沈静化した。当院初診時の強膜散乱法による前眼部写真をCorneAIに判定させると,症例1では水疱性角膜症,症例2では細菌性角膜炎の可能性が示唆された。
結論
濾過手術後などの長期ステロイド点眼使用例では,充血がマスクされやすく,さらに水疱性角膜症では,浮腫により新たな混濁は判別困難である。そのような状況下でもAIを用いた画像解析プログラムは診断の一助になる可能性がある。精度向上のためには,さらなる学習画像の蓄積が有効と考えられた。
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